英国一家 フランスを食べる
フランス料理といえば何を思い浮かべるだろうか?僕は味沢匠のイメージしかない。ザ・シェフという漫画のキャラクターである。そもそもフランス料理を食べる機会なんてないし知らないのも当然である。考えてみればフランス料理のイメージは美味しく高価なイメージだが、全く何も知らない。
「5分でわかるフランス料理の歴史」という章で、「イタリア料理とは、要はフランス料理にパスタをつけただけのものだ」とあるシェフが言い放った。なるほどフランス料理とはイタリア料理からパスタを抜いたものだということだ。うん。わかりやすい。少しはフランス料理のイメージが湧いてきた。またここでは、テレビにでるシェフの影響で、どんな料理にもオリーブオイルを振りかけるが、料理によっては風味が強すぎるし肉を炒められるほどに高温に達しないことを言及している。著者はMOCO’Sキッチンを知っているのだろうか。
簡単な紹介
さて、本書は英国出身のマイケルブース一家がフランスに移住しフランス料理を学んできた手記である。名門料理学校の「ル・コルドン・ブルー」で著名なシェフたちからの指導を受け、パリの名だたるレストラン「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」と「ジャック・カーニャ」での真剣勝負の修行が綴られている。僕は前作の「英国一家、日本を食べる」を確か中学校くらいの時に担任の先生から貸してもらって読んだ記憶がある。そんな懐かしさも感じつつkindleでダウンロードしたのである。自分にとって何が大切かを考えるのは大事だなと
著者マイケルブースは料理が好きだが、料理本のレシピ通りに料理を作っても全く美味しくできないことに気付き、手持ちの料理本全てを燃やすところからこの本は始まる。料理学校での出来事、フランスでの生活、フランスでの食事などが面白おかしく書かれている。著者の修行に対する素直な思いがつづられていて非常に共感できる。普通、自分の失敗や挫折に関してはあまり人に話したがらないものである。しかし、著者マイケルブース氏は素直に失敗も挫折も、成功の喜びも書き綴っている。
彼はフランス、パリの名門料理学校でフランス料理を学んだ。卒業後はそのままそこで学んだことをどこかのレストランで発揮する料理人にもなれたはずだが、彼は料理人にはならなかった。学んでみて自分に料理人は向いていないと悟ったのだ。なんといさぎよいのか。
普通の人は、自分が学んだことを活かして何かをしようとする。それまでその学んできたことに費やした時間が無駄になることを恐れるからだ。いわゆるサンクコストである。学んでみたかったから学び、学んだあとにそれが自分に向いているのか自分がやりたいのかを見極めて行動に移せる著者の姿勢は僕も見習うべきだと思った。そしてその料理学校での経験はフードジャーナリストとしてのキャリアに活かされている。フードジャーナリストの方が、彼の生き方にあっていたのだ。進路選択の時にこの考え方を活かしたい。自分は今何がしたいのか、そしてその後どのようにして生きていきたいのか。