アキタの雑記

博士後期課程の雑記ブログ。 読んだ本、コンピューター系のメモ、愛猫の写真、勉強のこととか。

2018年02月

ゲノムインプリンティング


ゲノムインプリンティング遺伝子発現の制御の方法の一つである。

一般に哺乳類は父親と母親から同じ遺伝子を二つ(性染色体の場合は一つ)受け継ぐが、いくつかの遺伝子については片方の親から受け継いだ遺伝子のみが発現することが知られている。 このように遺伝子が両親のどちらからもらったか覚えていることをゲノム刷り込みという。
ゲノムインプリンティングより)

エピジェネティクス


エピジェネティクスはゲノムインプリンティングのようにDNAの塩基配列に変更を加えることなくシトシンのメチル化などによって特定の遺伝子からのタンパク合成の状態を活性化したり抑制したりする現象。

セントラルドグマに基づく遺伝子からのタンパク合成と共に細胞現象の理解に大変重要である。

シトシンからウラシルへの変異


シトシンからウラシルへの変異は修復される。(シトシンのアミノ基がOに変化でウラシル)

5-メチルシトシンからチミンへの変異は修復されない。

DNAでウラシルは使われないからウラシルができたら修復しなければならないが、共にDNAで使われているシトシンからチミンへの変化は修復機構が働かない。長い時間をかけてシトシンからチミンに変化した。

DNAのメチル化


DNA中のシトシンのあるものはメチル化されている

ゲノムインプリンティングの状態は発生初期に一度取り除かれる。そして配偶子形成の時に決められた位置にメチル化が起こる。

出生後の母ラットのリッキングによりグルココルチコイド受容体遺伝子のプロモーターが低メチル化されグルココルチコイド受容体の発現量が増大。ストレスに強くなる。

逆に世話されていないラットはプロモーターが高メチル化されることで発現さがりストレスに弱くなる。

精子競争


精子競争とは同種異個体間で起こる自分のゲノムを子孫に受け渡す時に生じる競争のことです。


ヤリイカの交接様式と精子に見られる多型。


ヤリイカでは大型のペア雄と小型のスニーカー雄の二種類がいてそれぞれが作る精子が違う(同種なのに)。

大型のペア雄は雌と交接し精莢(精子の入ったカプセルみたいなもの)を雌の輸卵管出口に付着させる。

一方、小型のスニーカー雄はペア雄の交接に割り込んで、雌の口周辺部に精莢を付着させる。

ようは小型のスニーカー雄は大型のペア雄と戦っても勝ち目は薄いからよこから割り込むことで子孫を残そうという戦略なわけですね。

ここで問題が一つ。

小型のスニーカー雄の精子は口周辺にばらまかれても海水に拡散して受精できないのでは??という問題。

小型のスニーカー雄の精子存在下に炭酸ガス注入すると、そのガスに小型のスニーカー雄の精子が引き寄せられるという実験結果がでている。この炭酸ガスに引き寄せられる性質のおかげで炭酸ガスが含まれる海水中でも小型のスニーカー雄の精子は拡散しにくくなっているのだ。

同様の実験を大型のペア雄精子でおこなっても引き寄せられることはない。

またこの大型のペア雄精子と小型のスニーカー雄の精子は大きさも異なる。また前述のように性質も異なる。
このようなことが人間ではあるだろうか?190cmの男と160cmの男で精子の大きさも性質も異なるという話を聞いたことがあるだろうか。


シカネズミ精子の集合


シカネズミ精子が塊を作る。理由はよくわからん。


精子多型


動物が同一種同一個体で複数の精子を形成すること。受精能力のある精子を正常精子、もたない精子を異形精子と呼ぶ。


ヨコスジカジカの異形精子


ヨコスジカジカの精子形成では減数分裂第二分裂のときに不均等な細胞分裂と特異的な核凝縮から異形精子と正常精子に分かれる。

この異形精子は後から放精を行うスニーキング雄の正常な精子の動きを卵塊表面で邪魔する。

通常の受精は卵塊に精子をかけることで起こる。

後から精子をかける雄の精子を先にかけた雄は邪魔したい。

異形精子がそれに役立つ(物理的に邪魔になる)

また異形精子があることで正常な精子が確実に卵に届く。

ないと卵に届く前に散らばる。

精子形成


始原生殖細胞が生殖腺に入り、精原細胞へ成熟する。

二倍体の精原細胞は精巣内で通常の細胞分裂により増殖する。

次に減数分裂が開始され、一次精母細胞ができ、減数分裂第一分裂が完了すると二次精母細胞ができる。

二次精母細胞が減数分裂第二分裂すると精細胞ができ精細胞が成熟すると精子になる。

精子形成では体細胞分裂と減数分裂がおこる。

精子完成


精子完成とは精子の形態変化のことを意味する。

精子完成では
  • 1.核の凝縮

  • 2.ミトコンドリアの移動

  • 3.先体の形成

  • 4.鞭毛の形成

  • 5.残余小体の放出

  • などが起こる。

    核の凝縮


    核凝縮ではヒストンがプロタミンに置き換わることで核が凝縮される。

    ヒストンは正の電荷をもつリシンが多いが、プロタミンではリシンよりも強い正の電荷をもつアルギニンが多く含まれる。

    DNAは負の電荷をもつため、より強い正の電荷をもつプロタミンと結合するほうがより凝縮する。

    プロタミンは精子特異的塩基性タンパク質。

    ミトコンドリアの移動


    2.ミトコンドリアの移動は細胞骨格をガイドにした輸送システムによって移動される。

    先体の形成


    3.もともとはゴルジ体の一部が小胞化したことで先体は生じた。

    残余小体の放出


    5.残余小体の放出は精子完成の最終段階で起こり、精子から余分な細胞質が放出される。

    この時、精子形成細胞間に維持されていた細胞間架橋も一緒に放出され個々の細胞が独立して精子となる。

    精子の形成は視床下部から放出される生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンが脳下垂体に働き、脳下垂体からは生殖腺刺激ホルモンが放出され、精巣内のライディヒ細胞やセルトリ細胞へ働きテストステロン(性ホルモン)などによって制御されている。

    精子形成は精巣内の体細胞(ライディヒ細胞、セルトリ細胞)によって制御されている

    哺乳類の受精過程


    哺乳類が受精するまでの過程を分けて説明していきます。

    以下の6つのトピックについて書いていきます。
  • 精子の遊泳と超活性化

  • 先体反応

  • 透明帯結合

  • 透明帯通過

  • 精子卵結合

  • 多精子受精拒否


  • 精子の遊泳と超活性化


    ここでは精子誘引によって精子は卵に向かって泳ぐ。

    精子誘引


    放精・放卵された配偶子の間で、卵が精子の運動を方向付ける現象。

    卵から拡散される誘引物質によって卵の周囲に生じる濃度勾配に対する精子の走化性によって成立する。

    先体反応


    精子先体反応は細胞外から流入したカルシウムイオンに反応して先体膜と精子細胞膜が融合する現象。

    先体胞に隔離された酵素が放出され先体膜は外部へ露出する。

    放出された酵素がジェリー層や卵膜を溶解し精子の侵入を可能にし、露出した先体膜にあるタンパク質を使って精子は卵膜と結合し卵細胞膜と融合する。

    透明帯結合



    透明帯通過


    透明帯と卵細胞膜の間に遊離しているCD9と精子が結合することで、精子卵細胞膜融合を可能にする。

    精子卵結合


    Izumo,Junoの話。
    精子特異的に発現しているIzumoと卵特異的に発現しているJunoが結合することで卵膜と結合。

    CD9と結合している精子と卵細胞膜融合。

    多精子受精拒否


    多精子拒否には2つの方法がある。

    一つ目は早い多精子拒否で、これは膜電位の急激な上昇によっておこる。

    二つ目は遅い多精子拒否でこれは受精膜の硬化によって引き起こされる。

    遅い多精子拒否


    精子卵細胞膜融合の後、精子が持ち込んだPLC(フォスフォリパーゼC)がIP3(イノシトール三リン酸)を産生しIP3が小胞体膜上にあるIP3R(イノシトール三リン酸レセプター)に結合することで小胞体内にあるカルシウムイオンが放出されカルシウムウェーブが起こる。

    表層粒が卵細胞膜と結合する。

    卵膜と細胞膜の間に放出されたタンパク質分解酵素によって卵膜と細胞膜の連結が切れる。

    糖鎖によって浸透圧が上昇し、卵膜と細胞膜の間に水が流入して卵膜と細胞膜を引き離す。

    ペルオキシダーゼの作用によって受精膜が硬化する。

    2年最後の期末テスト生殖生物学のテスト勉強まとめ。一番やばめのテスト。頑張ろう。

    IZUMO


    IZUMOは精子特異的に発現しているタンパク質で精子卵膜融合に必要不可欠である。

    IZUMO遺伝子をノックアウトした雄マウスは不妊になったことからも明らか。

    精子細胞膜上にある全タンパク質の抗体を作成して1つ1つそれらの抗体を試し受精が完全に阻害されるものを選択した。(抗体が結合することで正しくレセプターに結合できなくなる。)

    ノックアウトマウスを作成するにあたり、IZUMOがきちんとノックアウトされているかを確かめるのにサザンブロッ
    ト、ノーザンブロット、ウエスタンブロットの3つの手法を用いた。

    IZUMO遺伝子を雄でノックアウトしたところその雄は不妊になったが、雌でノックアウトしてもその雌は不妊にならなかった。このことからIZUMO遺伝子は雄特異的に働いていることがわかった。

    透明帯を除去した卵と精子は融合は起こらなかった。(IZUMOは正常に働いているのにも関わらず。)

    このことはIZUMOは卵と精子の融合には直接関与しているわけではないということを示唆している。

    (The immunogloblin superfamily protein Izumo is required for sperm to fuse with eggs, Oocyte-triggered dimerization of sperm IZUMO1 promotes sperm-egg fusion in mice )

    CD9


    CD9は精子卵細胞膜融合に関わる卵で作られるタンパク質。もともとはインテグリンなどと同様に細胞接着に使われたタンパク質でもある。

    CD9がない卵では精子卵細胞膜融合は起こらなかった。

    精子卵細胞膜融合に必須なタンパク質。

    CD9は卵母細胞膜の外側に分布しているが次第に透明帯と卵の間へ遊離していくことがGFPを結合したCD9の挙動を観察することで確認された。

    透明帯を通ってきた精子にCD9が結合することで精子卵細胞膜融合が出来るようになる。

    (Requirement of CD9 on the Egg Plasma Membrane for Fertilization, The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from eggs in mice)

    JUNO


    JUNOは卵細胞膜上に存在しているIZUMOと結合するタンパク質である。

    IZUMOとJUNOが結合することで強い細胞接着が生じる。

    (Juno is the egg Izumo recepter and is essential for mammalian fertilization)

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